消しゴムたちが何かを話しています。
「はあ…はあ…」
「6Bの…!大丈夫か?ふらふらやないか…」
「最近空気スリーブ(猫町注:消しゴムが短くなっているのにスリーブが長いままの状態を指す猫町の造語。エアスリーブとも。消しゴム界におけるシークレットブーツであり、長ければ長いほど名誉なこととされている)がつらくて…もう立ってられんのや…」
(フラッ…)
「俺の肩につかまれ」
「ありがとう…タフガイちゃん…」
「チュース」
「Guten Tag」
「あ、先輩たち」
「お久しぶりです」
「なあ聞いてや。俺らもついに空気スリーブデビューやねん」
「フッフッ…ソウナンデスヨ…」
「おめでとうございます」
「ドイツ先輩はキッズたちに愛されて…?」
「確カニソレモアリマスガ、旦那サンノ気分転換ニ採用サレルコトモ増エテ」
「俺も俺も。旦那が中古で買った参考書とかに書き込みがある時によく呼ばれるわ。えんえん消す作業に飽きてくるみたいでいろいろ使いたいんちゃう」
「「なるほど…」」
「俺らは君らのように『蝶のように舞い、蜂のように刺す』タイプじゃないから肉体労働系なんや」
「ソウソウ…スタミナ勝負ノ『ロングスパート系』ナノデ…」
「「なるほど…」」
「しかし空気スリーブっていざ自分がなってみると想像とずいぶん違ったわ。足元が浮く感じにばっかり興味があったけど、首元がどんどんずり上がってく感じもあるねんなあ」
「ソレデスソレデス!ズリ上ガッテミテ初メテ自分ノ体ニ文字ガ書イテアッタコトヤ、『マルス』ノ紋章ガ彫ラレテイタコトニ気ヅイタンデスヨ!」
「そうやん。かっこええよなあ。あなたはちょっと古いタイプやけど、今のんにもあるんやろか?ええなあ…紋章…」
「……」
「……」
「…先輩らうれしそうやったな」
「うん…あんなにテンションの高いドイツ先輩初めてかも…」
「……」「……」
「空気スリーブってすごいことやねんな、てあらためて思ったというか…」
「…うん」
「もう少し頑張ってみる…」
「そやな」