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無罫フォント

猫町フミヲの文房具日記

ぺんてる・サインペン。

「お嬢さまペン」と聞いて、それがぺんてるのサインペンであることが分かる人間はこの世におそらく二人しかいない。
いや、もしかしたらもう少しいるだろうか。

話は以前働いていた文房具屋にさかのぼる。
以前働いていた店では、ノートや便箋等気のきいた紙製品を多くそろえており、それらを売るためにサンプルとして1冊を開放していた。
そのノートを使ってみたいお客さんに、自身の筆記具で自由に試し書きしていただけるように。

しかし、そこまで積極的でないお客さんにもノートの魅力に気づいてもらいたい。
そのためにはこちらでおもしろいサンプルを作ってしまえばいいのではないか。
というわけで、店員同士が交換日記を試みて作ったサンプルや、日替りで更新されるサンプルなど、ありとあらゆるサンプルを作った。

前述の「お嬢さまペン」というネーミングは、そんなサンプルノートの片隅から誕生した。
以下はその抜粋。

「ぺんてるのサインペンは本っ当にものすごくよくて、私が大金持ちなら家に20ダースくらい常備して、すべての考えごとをこのペンで書き散らしたいところです。そんで先がちょっとでも丸くなったら次のペンをおろす…

ばあや『まあお嬢様またもったいないことを!まだまだ使えるじゃありませんか!』
猫町『いいのよ。先が真新しいときだけ特別素敵な字が書けるんですもの。あとはばあやがお使い』

(小一時間続く妄想)」

そんなわけで、サンプルノートで交換日記をしていた先輩と私との間では、ぺんてるのサインペン=「お嬢さまペン」ということになってしまったのだが、サンプルノートは実は密かに愛読者が多く、販売効果も大きかったので、もしかしたらわれわれ以外にも「お嬢さまペン」で通じる人がどこかにいるかも。

さて、このサインペンの魅力は、サンプルノートに書いたとおりである。
何と言ってもペン先が丸くなるまでの、あの細い、よそゆきのかわゆらしい線。
あれにつきる。
どうしてへたるんだーーー
へたるのがまた早いぞーーー
なのにまた使いたくなるのはなぜだーーー

私と同じような人がいるのか、このペン、がっちりユーザーの心をつかんでいるのは確か。
店頭でも、「ほらあの、昔からある、水性の、マジックの」とうわ言のように繰り返す人は9割方ぺんてるのサインペンを探している。
外見もシンプルで何の特徴もなく、また名前もただの「サインペン」という困ったちゃんで、店員泣かせではあるが、「これですか」と差し出したときのお客さんのほっとした表情ときたら。

ちなみに猫町家では「犬ががじがじ噛んだみたいなペン」と呼ばれています。
ぺんてる・サインペン。_f0220714_23291817.jpg

Commented by ちはる at 2010-05-05 01:15 x
まさにこのペン!
ただし常用しているのは「赤」。
品物がそろっているかどうかチェックする、お客様の名前を書くのに使っています。
刷毛となる時期を乗り越えて使って、ペン先が無くなるまで使ってしまいます。
この記事を読んで無いのに、あの会話…
Commented by mukei_font at 2010-05-11 08:21
>ちはるさん
まさかあんな場所でサインペンの話をすることになるとは…
でも楽しかったです。
ぺんてるのサインペンは永遠のロングセラー。
みんな「ハケ化」させながらも使ってるんだなあ。
Commented by たけの at 2010-11-19 14:55 x
サインペンのハケ化はぺんてるのDNAですね。創業者の父親が筆職人だったそうですから。
ところで、以前宣言したとおり、猫町さんのブログ、全部読んじゃいました。油性ボールペンがどうにも苦手な自分には、替え芯の話はちょっとついていけない感じでしたが...
普段の生活では、油性ボールペンを極力避けるようにしています。ただ、どうしても避けられない場面があって、そのたびに小学生レベルの字を人様にさらしてしまって恥ずかしい思いをしています。
複写式の請求書を書くときや役所、銀行の窓口。それに宅配便の受け取りの際に配達員さんからサインを求められる場合も、渡されるのは100%油性ボールペンですね。
自分の場合、鉛筆やサインペン、ゲルインクボールペンくらいの適度な抵抗感がないと、まともな字が書けないのです。油性ボールペンはつるつる滑ってしまって、線があらぬ方向に伸びてしまったり、止めたい所に止められないといった感じです。ジェットストリームが滑るのはもちろん、ねっとり重たいLAMYのインクでもやっぱり書きにくいのです。
油性ボールペン嫌いを克服するいい方法ってあるのでしょうか?
Commented by mukei_font at 2010-11-20 14:13
>たけのさん
こんにちは。
ハケ化についてのコメント、うれしいです。
そうなんです、小生もどこかで「創業者の父親が筆職人」というのを知り、(ハケ化というとマイナスなイメージだけど、筆みたいと考えればそう悪いものでもないのか…)などと考えておりました。

ブログを読破していただいたとのこと、心からお礼を申し上げます。
本当になんて素晴らしいことでしょう!
このブログは自分が好きなものについて好き勝手に書いているだけのブログですので、もちろんつまみ食いのように読んでいただければいいのですよ。
読者の皆さんと完全に好みが一致することなんてないですから。
替芯の話は特に自己満足の極みでして…適度にスルーで結構です☆
Commented by mukei_font at 2010-11-20 14:19
>たけのさん(続き)
それにしても、油性ボールペンが苦手とのこと。
例えば実際にたけのさんが店頭に来られたら、いろんな筆記具で書いていただいて、どんな感じで苦手なのかが分かるのですが…文章だけでは難しいですね。
油性ボールペンの抵抗感のなさをあげておられますが、おっしゃるとおり、ジェットストリームは抵抗感を限りなく減らしたインクですからすべってしまうのはよく分かるのですが、一般的な油性ボールペンは、たけのさんがあげられた筆記具の中でも一番筆圧を要求される重いインクのはず。
鉛筆やサインペン、ゲルインクボールペンがよくて、油性ボールペンがだめなのは、あるいはその筆記線の太さかもしれませんよ。
書いた後の文字にある程度の太さがあれば、なんとなく文字をごまかすことができますから。
役所等の受付にある油性ボールペンはたいてい0.7。
書いた文字はひょろひょろになってしまい、見栄えもよくないのかもしれません…
相性の良い油性ボールペンに出会えると油性ボールペン観が変わることもありますが、しかたのないときだけ我慢して、あとはお気に入りのペンを使えばよいと思います☆
Commented by mukei_font at 2010-11-20 14:32
>たけのさん(続き)
どうしても、と言うのであれば、一度、油性ボールペンのペン先の太いものを使ってみてはいかがでしょう。
1.0、1.2、1.4、1.6とありまして、どれもいわゆる普通の油性のインクなので筆圧をかけない限りすべってしまうことはありません。
書き上げた文字も少しはひょろひょろじゃないかも…
文房具屋の店頭でぜひ試し書きを。
あと、書く時に下にやわらかいもの敷くこと。
これが油性ボールペンと上手につきあうコツです。
いわゆるデスクマット的なもの。
ソフト下敷きというものもありますが、なければ軟質のカードケースでもよいです。
役所の受付にはこうしたものが充実していますが、ときどきないところがあり、書けるかー!とちゃぶ台を引っくり返したくなります。
またよろしければどのゲルインクならまだましかを教えてくださいね。
いろいろ考えてみます☆
長文失礼いたしました。
Commented by たけの at 2010-11-20 17:35 x
お体大丈夫でしょうか?体調が優れないのにコメントにお返事いただいて申し訳なかったです。
油性ボールペンの線幅が細い件、納得しました。いままで疑ったこともなかったです。よく見てみると0.5のゲルインクよりも0.7の油性のほうが実際ほそいですね。
プラチナポケットという伸び縮みするペンを持っていますので、太い変え芯を買い求めて試してみます。
ちなみにいつも使っているゲルインクはユニボールシグノ(キャップ式)です。
いろいろ教えていただいてありがとうございました。お体大切になさってください。
Commented by mukei_font at 2010-11-21 22:45
>たけのさん
コメントありがとうございます。
少しでもお役に立てたなら幸いです。
体調は大丈夫ですよ。
ご心配おかけするようなことを書いてしまい、恐縮しています。
またいつでも遊びに来てください☆
by mukei_font | 2010-05-04 23:23 | その他筆記具 | Comments(8)

by 猫町フミヲ@無罫フォント
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