新油性ボールペンの4C芯化・その実現可能性。
2010年 10月 14日
今夜のお題は「新油性ボールペンの4C芯化・その実現可能性」。
まず4C芯について軽く復習。
4C芯とは主として多機能ペンに入っている金属の短い芯のことで、もっとも互換性のある替芯の一つ(4C芯はお好きですか。参照)。
国内メーカーの場合、一般に4C芯というと油性芯。
色展開はだいたい黒赤青で、太さは0.7。
メーカーによっては黒のみ0.5や1.0があったりする。
油性以外のインクが入っている4C芯を作っているのは現時点で国内メーカーではZEBRAくらい。
ゲルインクの0.4と0.5を複数色展開している。
これら4C芯の素晴らしいところは何と言っても汎用性の高いところ。
ZEBRAのみ要注意だが(案外深い4C芯の世界。参照)、割と見栄えのする高級軸(舶来筆記具含む)に気に入った4C芯を入れれば手軽にカスタマイズできてしまう。
要するに、気に入った芯が4C芯化さえされれば理想のボールペンを作ることができるというわけ。
そこで「新油性ボールペンの4C芯化」の話になる。
新油性とは油性ボールペンなのになめらかに濃く書ける最近流行りの油性ボールペンのインクのこと。
三菱のジェットストリーム。
PILOTのアクロボール。
ぺんてるのビクーニャ。
油性ではなくエマルジョンインクであるが、ZEBRAのスラリもこの仲間だろう。
これらのなめらか系油性インクの4C芯を作ってくれ、と。
そういう話である。
そもそもこのような話の背景には既存の商品への不満がある。
皆、既存の商品に満足していない(特にデザインに関して)。
せっかくインクは気に入っているのに、多色や多機能になると、途端に軸がちゃちで安っぽい。
あるいはごつくてどんくさい。
そう感じているからこその4C芯待望論だといえる。
しかし、ユーザーの熱い思いとはうらはらにメーカーの腰は重い。
8月の三菱の展示会においてはジェットストリームの担当者に、9月のPILOTの展示会においてはアクロボールの担当者に、いかにそれが待たれているかを訴えてはみたものの、原理的にはできないことはないが今のところ予定はないの一点張り。
むー。
なぜ4C芯化されないんだ。
それについて考えるのが今夜のテーマ。
とはいえもう答えは出ているようなもので、まあ一言で言ってコストですよね。
仮に4C芯化されたとしてそれはいったいいくらになるのか、ちょっと考えてみたのである(なお、話を分かりやすくするために、芯の価格は三菱、PILOT、ZEBRAを参考にした)。
例えば油性の4C芯は1本¥80。
これに対して単色のノック式油性ボールペンの替芯は1本¥60(多色も)。
インクが明らかに少ない短い金属芯のほうが高いのである。
一方ZEBRAのゲルの4C芯は1本¥160。
単色ノックのゲル芯が1本¥80、多色ノックのゲル芯が1本¥60なので、4C芯は単色ノックのちょうど倍。
さて、新油性ボールペンの替芯の価格はどうか。
ジェットストリーム、アクロボールともに単色ノックで1本¥100、多色ノックで¥80。
仮に4C芯化されたとして安く見積もって1本¥150〜¥180といったところか。
単色の倍だと¥200だが…ちょっとそれはないか。
おまけにゲル同様、新油性のインクもマッハの速さでなくなるわけで…
この価格で売れると判断できる根拠がないとメーカーもちょっと踏み切れないんじゃないかしらん。
いったい新油性の4C芯化を待ち望んでいるユーザーは1本いくらくらいまでなら買おうと思うのだろう。
小生は幸いにもマイジェットストリームの外見(ジェットストリーム0.5の青)が気に入っているし、多機能の4+1をそこまで愛用しているわけでもなく、したがって素敵な多機能を夢見ることもないが、先だってのお客さんのようにシャーボxになめらかな油性芯を入れたくてたまらない人はやはり多いだろう(万年筆、替芯、トラベラーズノート。参照)。
ということは基準はやはりシャーボxということになってくるのかもしれない。
要するに替芯1本¥160前後。
現にシャーボxユーザーのゲル派は、あっという間にインクがなくなるのを承知でこの価格の替芯を買っている訳だから。
しかし、単にシャーボxと足並みをそろえるような簡単な話であるわけがない。
ZEBRAはまず「シャーボx」ありきという強みがある。
好きに芯を組み合わせて自分だけの多機能(しかも高級な)を作れるのが売りのシャーボx。
ゲルの4C芯はあくまでもパーツの一つ。
そう考えると新油性の4C芯化に一番近いのはZEBRAともいえる。
スラリのエマルジョンインクを4C芯の仲間に加えるだけでいいからである。
さてそうなると、シャーボxを持たない三菱が、PILOTが、ぺんてるが新たにぽんと替芯だけを作ってくれるだろうか。
仮に作るとして、それはいったいどのような文脈で?
そこで、考えたのである。
ここから先はもう完全に妄想ですのであしからず。
さて、ここまで4C芯化が難しそうな事情があれこれあるにもかかわらず、それでもあえて踏み切るメーカーがあるとしたらどこだろうか。
小生の予想は以下のとおり。
PILOT>ぺんてる>三菱
なぜPILOTが一番可能性がありそうか。
理由はジェットストリームはおろかビクーニャにさえ押されがちであるアクロボールの知名度の低さ。
ライバル2社を出し抜く唯一の可能性は、アクロボールを4C芯化し、新油性初の4C芯を誕生させること。
ジェットストリームがもたもたしていることにしびれを切らした新油性4C芯待望ユーザーが皆アクロボールに流れればしめしめ…というもの。
PILOTの強みはこれだけではない。
三菱、ぺんてるに比べて多機能ペンの多さは圧倒的なものがある。
つまり、仮に最初に1本、「アクロ3+1(仮称)」なる多機能を作って世に出したあと、その際に生まれたアクロ4C芯を使える軸がたんとあるわけである。
これは強い。
次にぺんてる。
前述の「既存の多機能が多いほうがなにかと有利」的な考え方からすれば、4C芯が使える多機能がランスロットくらいしかないぺんてるは不利に思えるかもしれない。
が、ぺんてるというメーカーは言わばダークホース。
ちょっと何を考えているのか分からないびっくり箱的なところがある。
それに何といってもオタクにやさしい(簡易版・文具オタク度テスト。参照)。
何の打算も展望もなく、ひょいと作ってくれるならぺんてるというか、とにかくぺんてるならやりかねないという気がする。
文具界の「天然」というか。
実際、過去のぺんてるのあらゆる商品を思い浮かべても、それって一時的に社内でもり上がっただけじゃ…みたいなものがあるのも事実。
もはやこれは文具マニアの勘だ。
そして一番なさそうな気がするのが三菱。
理由はもともと三菱に魅力的な多機能がなさすぎる点。
それは何かのポリシーなのかと勘ぐりたくなるほどに三菱には高級ラインの多機能がない。
テトラペンやピュアモルトの多機能などがせいぜいとくれば、わざわざジェットストリームを4C芯化させてまで新たな多機能を作らせるのは不安である。
ジェットストリームの4C芯を待ち望む信奉者たちは芯だけでええねん、軸なんかどうでもええねん、と思うに違いないが、三菱としては作るからには軸も売れてもらわないと困るわけで、最初から芯だけに期待しているユーザーのために適当なところで妥協した多機能は出さないだろう。
PILOTが長年高級多機能を出していく中で、どんどんデザインその他を洗練させて来たように(最近若干CROSSのパクリのようなのもあるが)、やはり今まで作り慣れていない部分はメーカーとして弱い気がする。
中途半端なことでは勝てない。
そしてむしろ得意な部分を伸ばそうとして来るのではないか。
例えばまだどの他社も真似ていないクルトガ路線。
三菱としてはジェットストリームを4C芯化させるためにあえて未知の領域の多機能に手を出すよりは、クルトガとジェットストリームのタッグを実現させようとするだろう。
そしてその完成体はけっして高級軸路線ではなく、精一杯背伸びしてもやはりちゃちでどんくさいものになりそうな予感がする。
だいたいこんな感じなのではないかと。
少なくとも現時点では。
もちろん想像です。
どうか裏切ってください。
あれこれ書いてきたが、個人的には新油性の4C芯化はやはりジェットストリームに一番乗りしてほしい。
誰が何と言おうと、新油性の歴史はジェットストリームから始まったからだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追記
後日談1:ぺんてる・ビクーニャEX。
後日談2:ついにジェットストリーム4C芯化、ジェットストリームプライム。
後日談3:新油性ボールペンの4C芯、ようやく出そろう。
あと、記事にはしておりませんが、シャーボxにエマルジョン替芯出てます…時代は流れますね。
先日はレスへのお返事ありがとうございました。
手帳の紙の件、もう少し話したい気もするのですが、
後の楽しみに取っておきたいと思います。
さて、新油性の4C化を最初にやるのはどこか?
パイロット、ぺんてる、三菱の御三家は
「最初には」出さないだろう、と見ました
ぼくの予想は「ガチャックのオート」です。
低粘度の油性ボールペンは、自分の記憶では
このメーカーの油性ソフトインクは低粘度の暁の鐘となり、
細字ペンのニードル形状の濫觴も同社でした。
今日、自社軸がないのに4C芯をラインナップし、
ピンクまで用意するという念の入れようには、
「OEMでもいいから独自製品を」という心意気が見えます。
この話の弱点は、軸メーカーが見えてこないところ。
豊富な高級軸を出しながら、インクの独自性に乏しい
プラチナがOEMに採用する…
などといった、いっそう大胆な仮説が必要そうです。
と、いよいよ与太話が妄想めいたところで、おしまいにします。
長文、失礼しました。
私はパイロットのハイテックCスリムス用のリフィルをラミーの4色に入れてます。緑はないんですけどね。
スリムスの軸も好きです。
うーん、つまり200円でも買うってことですね、私なら。
夢は広がる〜るるる〜。
コメントありがとうございます。
この長い記事を読んでくださっただけで感謝感謝です。
なるほどOHTOですかー
ありそう!と思いました。
でもOHTO自社軸ありますよね…?
小生の「自社軸観」が間違っていたらごめんなさい。
OHTOとして筆記具がたくさん出ているなあと思って。
小生も多機能持ってますよ、MULTI SLIM4とか。
OHTOのカタログに載っているのはOHTOの筆記具かと思っていました。
なので、OHTOがジェットストリーム級のナイスな新油性インクさえ開発すれば、問題なく4C芯化、多機能として売り出せるのではないでしょうか。
現時点での油性ソフトインクも普通の油性に比べると濃くなめらかではありますが、書き出しが必ずかすれる点、にちゃにちゃしてだまができやすく、そのだまが裏抜けする点を改善しないことには、いわゆる新油性ボールペンたちと肩を並べることができないと思います。
プラチナは確かに多機能の宝庫。
インクに興味なさそうですけどね…(苦笑)
普通の油性の4C芯でも¥100だし…
また手帳についてどんどんコメントくださいね☆
コメントありがとうございます。
なんとハイテックCスリムス用のリフィルとは…
あんな難易度の高いものを使いこなせるとは…
小生はもうPILOTのあのペン先がどうにもこうにもだめで、いつ出なくなるかいつ出なくなるかと思うと、恐怖心が先にたち、しだいに手が伸びなくなっていくのです。
先日大騒ぎして購入したコレトも光速で挫折の予感。
小生にはぺんてるのスリッチ級のタフさが必要のようです。
スリッチの4C芯が出たらそれこそ高くてもチャレンジしたいですね。
それにしてもkekoponさん本当にラミーがお好きなんですね。
素敵なことだと思います☆
コメントありがとうございます。
昨晩の書き込みでは、オートのラインナップを
きちんと確認してできていなかった点、
お恥ずかしい限りです。
(Webで確認しました。MULTISLIM4 は4C芯ですね。
この値段で真鍮製・振り子式ノックとは、ビックリです)
油性ソフトは、確かに新油性には及ばないですが、
今後の改善に期待したいです。
(PS‐207NPをアメリカンテイストで
使ってますが、トラブルは少ないし、
地味だけどいいインクと感じています)
プラチナの場合、いい高級軸があるのに、
インクがイマイチで惜しいと思ってます。
オートは逆に、インクはいいけど高級軸がイマイチ。
"OEM云々"は、両者のイイトコドリをして欲しい、
というはかない願望ですね。
手帳の感想、今度はちゃんと整理してから書こうと思います。
では、また。
コメントありがとうございます。
お返事遅くなりました。
当ブログはブログ主がまだまだ駆け出しのレベル、何も考えずに気楽にへらへら書き込んでくださっていいのですよ☆
OHTOについてはたまたま前職場にOHTOの筆記具が勢揃いしていた関係でなじみがあっただけですし。
確かにプラチナは「プラチナ萬年筆」という社名にもかかわらず、すっかり多機能に夢中…
あちこちでユーザーを見かけます。
またなんでもコメントくださいねー
お待ちしております。
自分もジェットストリームの4C規格化は是非して欲しいと思っています。
ただ理由が逆で・・・
三菱ピュアモルトのジェットストリームに4C規格のゲルインクを入れたいのです。
なんとかなってくれないかなぁ・・・
はじめまして。
ようこそ無罫フォントへ。
4C規格のゲルインク…ZEBRAのシャーボxとかPILOTのHI-TEC-Cスリムスの芯ではだめなんですよね?
ジェットストリームの4C芯、三菱は作らないんじゃないかと思いますが…(勝手な予想)
自分は、ウイスキー好き、多機能希望、ゲルインク希望なので、ジェットストリームピュアモルト4&1にスタイルフィットの芯を切って入れています。
ややこしくなってしまいましたが、要するにみんな規格を揃えてくれたら、自分で好きなの作れるのにって事です(´・ω・`)
なるほど、「4C芯が入るタイプのピュアモルトのボディ」が欲しいという話なんですね。
早とちりしてしまいました。
申し訳ありません。
それならば、3機能ペン(MSE-3005)、4機能ペン(MSE4-5025)はいかがでしょう。
三菱の4Cタイプの芯(SE-7)が入っているので、シャーボxの芯が入りますよ(芯の径が少々太いあたりは自己責任ということで)。
確かにZEBRAの4C油性のブルーブラックはブルーブラックに見えませんね。
あれはターコイズブルー?
まずはエマルジョンインクの4C芯をデビューさせ、徐々にカラーバリエーションを増やしていってほしいですよね。
すでにスラリにブルーブラックはあるわけだし、あと一息というところまで来ているように思うのですが…(値段はどうなるか分かりませんが)
はじめまして、猫町さま。
いつも楽しく読んでいます。
わたしが文具に凝るようになったきっかけは、ゼブラのクリップオン500です。
一本でシャープ、黒、青、赤と使えるので便利と思って使い始めました。そこでやめておけば良かったと思うのですが、「自分にピッタリの筆記具はどれ?」と思ってしまったのが始まりです。
油性4Cは、書き出しでかすれるのがいやで馴染めなかったので、今回のエマルジョンに期待しています。
なるほど、「自分にピッタリの筆記具はどれ?」と追究を始めちゃいましたか…(そしてこんなブログを見つけてしまいましたか…)
エマルジョンの4C、小生も試してみたいのですが、実は4Cがあまり好きじゃなかったりして…
4Cというか4Cが入っているボディが…
安上がりな小生はプラスチックでできた多色・多機能で十分幸せなんですよ。
ラバーグリップが付いていて握りやすかったりしますしね。
あ、たぶん手帳を使わないからだと思います。
手帳を使う人は細軸の多機能がいりますもんね。
すでに記事にしています。
よろしければどうぞ。
ついにジェットストリーム4C芯化、ジェットストリームプライム。
http://mukeifont.exblog.jp/20459210/
失礼しました。ちょっとびっくりしたので勢いで書き込んでしまいました。
Googleで”新油性ボールペン”と検索するとこのページがトップに来ます。
(ご興味のないニュースでしたらすみません)
さて、私は名前を「4C好き」としておりますが、現在はStylFitのジェットストリーム 1.0をカットし、COLETO LUMIO軸に
入れて使っています。軽い筆圧でもしっかり書けるので最近のお気に入りです。
ただし、ジェットストリームは時間が経つとにじむ場合があるというお話しですので、完全に仕事用です。
日記など長期間残る可能性があるものは、万年筆やゲルインクボールペンで書いています。
いつかは、渋く、カッコよく、4Cリフィルのペンを使えるようになりたいなぁ。
楽しいご報告ありがとうございます。
何事かと思ってしまいました(笑)。
4C芯がお好きということでしたら、選ぶペンもリフィルもたくさんありすぎてかえって迷ってしまいそうですね。
いつか素敵なペンとめぐりあえることを祈っています。