無知の罪。
2010年 10月 26日
せつない。
高校生のときに地元のさえない文房具屋で買った万年筆だった。
白の細軸に青い小花模様。
ぱちんとしまるキャップ。
金属のクリップ。
PILOT製。
ファンシーな外見に似合わずしっかりした作りで、万年筆のなんたるかが分かっていない高校生が使っても機嫌を損ねないタフさがあった。
PILOTのFだったから気持ちよく細字も書けたし(だからすんなり入っていけたのだろう)、カートリッジを何本も空にするほど文字を書いた。
それが行方不明になって久しい。
何度目かの引っ越しのときに捨てた可能性が一番高く、それはもう書けなくなった=壊れた、と思ったからだった。
愚かなり。
猫町愚かなり。
万年筆で一番やってはいけないのは、カートリッジを差したまま、使わずに放置することだ。
水分だけが蒸発して、ペン先にインクがこびりついてしまう。
久しぶりに取り出してみて、新しいカートリッジを差しても書けないのはそのせいだ。
こういう場合は、水に一晩つけるなどしてとにかくインク洗い流せばなんとか復活させることができるが(ひどいときは修理に出して分解して洗浄しないといけないこともある)、無知だった小生は「洗う」ということを知らなかった。
そんなことしてえんかな、と思っていたのだ。
怖々ペン先を少し水に濡らす程度で洗ったことにしていたのだ。
誰も何も教えてくれなかったから。
無知は罪だ。
ほんの少し知識があれば、簡単に甦らせることができただろうに。
もし今、あの小花模様の人がいたら、あの頃よりもっとずっと仲良く出来る。
コンバータを差して、いろんなインクを吸い上げることも(CON-20は入るだろう)。
片づけるのが下手なだけで、部屋のどこかや、実家のどこかでまだ埋もれていればと思う。
あんな可憐な万年筆は、もうどこのメーカーも出してはいない。
それより何より、高校生、そして大学生と、人生をともにした万年筆。
特に人生最大にくすぶっていた大学生の頃、図書館で立原道造の詩を書き写したりした万年筆。
もう一度君に会いたい。
私も無くしてしまってから後悔する文房具が沢山あります。
私も引越を何度か経験しておりますので、どこに行ってしまったのか分からなかったり、実家の解体時に残してしまった荷物の中に紛れ込んでしまった物達もあります。
今思えば、かなり貴重な廃盤商品や、使いやすいのに他のペンに浮気(笑)してペンケースに入れていなかったペンもあって、今はすごく恋しいです。
まさに、逃がした魚は大きい状態です。
同じものが購入できないか、探してはいますが、廃盤となっていることもありなかなか見つかりません。
私もあのペン達にもう一度会いたいです。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
もみじさんも同じような経験がおありなんですね。
筆記具の数本、捨てたところで荷物の量に変わりはないのに、どうして引っ越しのときはあんなにむきになって捨てようとするのでしょうか。
なぜもっと大事にしなかったんだろうと思います。
小学生の頃に使っていたシャープペンやボールペン、今ここにあればどんなに楽しい同窓会でしょう。
年末帰省した折りには、もう一度本気で探してみようと思っています。
もう干支ひとまわり以上昔の記事にコメント失礼いたしました。(5年ぶりに過去記事から再読させていただいております。)