OHTOかく語りき。
2010年 10月 28日
OHTOのホームページを見ていただければ一目瞭然だが、OHTOとはあの「ガチャック」のOHTO。
OHTOの筆記具は知らなくてもガチャックをご存じの方はたくさんいるはず。
さて、OHTOの筆記具の特徴は何と言ってもニードルポイント。
先端が針のように細くなったペン先で、ボールの径は0.7と一般的な太さにもかかわらず、手もとが見やすいため細部まできっちりとした文字が書ける。
また、このニードルポイントは削り出し製法によって作られているため、見た目よりもずっとタフ。
例えばPILOTのHI-TECシリーズなとでは、強い筆圧でペン先が曲がってしまうことがしばしばあるが、それはおそらく2種類の部品を組み合わせて作られているから。
OHTOではまずそのようなことはない。
筆圧の強いことでは他の追随を許さなかった前職場の先輩が大のOHTOびいきだったのが何よりの証明だ。
さて、油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインクボールペンと3種類あるOHTOのニードルポイントだが、今語りたいのは油性ボールペンについて。
OHTOの油性インクの特徴は油性ソフトインク。
従来の油性インクよりも粘度の低いインク。
黒々とつやつやと書けるやわらかいインク。
この油性ソフトインクが、三菱のジェットストリームやPILOTのアクロボール、ぺんてるのビクーニャといったいわゆる「新油性インク」に分類されるのかどうかまでは分からないが、何の変哲もない従来の油性ボールペンのインクより濃くなめらかなのは確か。
そこで思い出したいのが、先日長々と熱く語った「新油性ボールペンの4C芯化・その実現可能性。」の記事。
新油性ボールペンの4C芯化はありえるかについての論考。
そしてそのコメント欄におけるTetzuoRさんとのやりとり。
まとめるとこうだ。
OHTO=油性ソフトインク=4C芯あり
∴油性ソフトインクがジェットストリーム級に進化すれば、新油性インクの4C芯化が期待できるのはOHTO
で、先日の見本市のOHTOのブースでどさくさにまぎれて聞いたみたのである。
猫町「今の油性インクも十分素晴らしいんですけど、さらにもっとなめらかに…要するにジェットストリームくらいなめらかなインクを作っていただければ、OHTOさんはすでに4C芯もあることですし、三菱さんやPILOTさんにないものを作れると思うんですけど」
OHTO「実はもうなってるんです」
なんと。
いつのまにか、油性ソフトインクが進化を遂げていた。
知らんかった。
OHTOの筆記具から離れて一年。
猫町愚かなり。
OHTOの人曰く、特に芯の品番は変えていないが、中のインクはそのなめらかさを増しているとのこと。
が、試し書いた感じでは確かになめらかだが、まだまだジェットストリームなどに比べると「OHTOの油性ソフトインク」の域を出ない感じではある。
OHTO「三菱さんのはね、あれはもう油性じゃないんです。うちは油性ですから」
こだわりとプライドが垣間見えた一言。
そうなんです。
ジェットストリームもビクーニャも、あれは油性であって油性にあらず。
成分的にはもうゲルインクなのだ。
その証拠に油性ボールペンのインクを消すガンジーのインク消しではジェットストリームは消えない。
もはや油性じゃないのだ。
猫町「でも、お客さんからの要望は多いんです。皆さん新油性の4C芯待ってはるんです。どうして三菱さんたちは作らないんでしょうか。値段が高くなるからでしょうか。あっという間になくなるからでしょうか」
OHTO「難しいからですよ」
なんと。
これまた意表をつかれた。
難しいらしい。
あの細さにあのインクをつめることが。
技術的にはできるものの、コストのことで二の足を踏んでいると思っていたが、普通にあれは難しいらしい。
「三菱さんのような大手は分かりませんが」との前置きで、少なくともOHTOでは試行錯誤に大変とのこと。
細いパイプに押し込めること、ボールとカシメとの兼ね合い。
すべてが難しいらしいのだ。
すみません。
何も分からずにおねだりするばっかりで。
猫町「でもせめてOHTOさんの芯、書き出しにかすれなければ…書き始めれば十分なめらかなんですけど…」
どこまでも歯に衣着せぬ猫町。
が、嫌な顔一つせず、OHTO氏はうなずくのであった。
OHTO「うちは初筆はだめなんです」
ああ、やっぱり分かってたんだ…
理由はPILOTのアクロボールがかすれるのと同じ。
要するにインクがやわらかい分、乾きやすくしているのだ。
そうでもしなければ、しまりの悪いことになってしまうのだろう。
その辺りの兼ね合いも非常に悩ましいところだ。
OHTOのボールペンを使ったことのある人は分かると思うが、書き出しは必ずそのへんのいらない紙にぐりぐりぐりと試し書きしてからじゃないと最初がかすれるのがOHTO。
この動作がいらないのは、最初からMAXの筆圧を発揮できる前職場の先輩くらいのものである。
OHTOは熱烈なファンの多いメーカーで、幾度も熱いファンの接客をしたことがあるが、その人たちも皆「いらない紙にぐりぐり」のステップは踏むと言っていたように思う。
それでもなお愛されているOHTOなのだ。
こんな感じの有意義なやりとり。
初対面だったにもかかわらず、本当にいろいろなことを教えてくださった素敵な方だった。
このやりとりで分かることは以下の2点。
OHTOが腰の低い、しかしプロ意識の高い魅力的な文具メーカーであるということ。
そして猫町という人間がすぐに仕事を忘れて趣味に夢中になってしまうということだ。


こちらの記事を読み、本日仕事帰りにダッシュで文房具屋さんに行き、「おお、本当に書き始めるとスラスラー!」とひととおり興奮して帰ってまいりました(笑)。細身でラバーグリップのないタイプという、好みのひとがいたんですが、いかんせん2+1。仕事ではシャーペンはまず使わないのよ…とお店を後にしました。3色BPでいいひとがいないか、また探してみます。HI-TEC-C coletoで、ニードルポイントは先が潰れやすいと思い込んでおりましたので、ちょっと目から鱗でした。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
なるほど…
確かにOHTOを置いているところは大阪でも少ないです。
やっぱり筆記具は手に取って選んでみないとだめですものね。
油性のニードルの魅力をじわじわと広めていけたらと思っているのですが…
はじめまして。
ようこそ無罫フォントへ。
熱い語り、などと言われてしまうと、暑苦しくてうざかったらどうしよう、とおろおろしてしまうのですが、楽しんでいただけているならうれしいです☆
もしOHTOの芯を気に入られたようであれば、シャープペンのない「細身でラバーグリップのないタイプ」のボディを探しましょう。
そのボディにOHTOの4C芯を入れて使えばいいのですから。
PILOTなどには3色のボディがあったはずですが、Q太さんの好みに合うかどうか…
ZEBRAにトレッチェントというシャーボxの兄弟みたいな人(シャープペンなしの多色ボディ)もいますが、そこまで細身ではなかったような気が(トレッチェント、小生は画期的と思いましたが、いまいち盛り上がっていません…)。
ちなみに前職場の先輩はLAMYの4ペンにOHTOの黒の4C芯ばかり4本入れて使っていました。
HI-TEC-C coleto…あれは使える人がすごいのです(きっぱり)。
ニードルポイントではぺんてるも最高に素晴らしいので(削り出し製法で頑強)、HI-TEC-Cなどにめげず、ぺんてるのスリッチやハイブリッドテクニカでトラウマを払拭してみてください。

はじめまして。
ようこそ無罫フォントへ。
記事を取り上げてくださってありがとうございます。
OHTOへのあふれんばかりの愛を読ませていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。