キャップ式か、ノック式か。
2010年 11月 25日
三菱の展示会で得た知識を大いに語るつもりだったのだ。
「どきどき替芯篇」「なるほど雑学篇」「わくわく新商品篇」の3部構成。
「どきどき替芯篇」だけでも「ジェットストリームの巻」「パワータンクの巻」「シグノの巻」に分かれているという充実ぶり。
結局書いたのは「どきどき替芯篇」の「ジェットストリームの巻」のみ…
本当に申し訳ありませんでしたっ。
「わくわく新商品篇」にいたってはもうぼちぼち店頭に並び始めているありさま。
あのときはとれたてぴちぴちの情報だったのにーーー
でもまあ「どきどき替芯篇」に期限はありませんから。
年中ハアハアですから。
展示会から3ヶ月過ぎようが半年過ぎようが、関係ナッシン。
そんなこんなで、今夜は「どきどき替芯篇」の「シグノの巻」。
ゲルインクはキャップ式か、ノック式かというお題について考えてみたいと思います。
小生は自他ともに認める替芯マニアだが、一般的な知識と、自分自身の経験からつかんだ感覚を混同させないようにしなくてはと日々自分を戒めている。
どこからどこまでが不動の知識で、どこからどこまでが個人の見解なのか。
普段の接客の中でもここはきっちりと分けて説明することにしており、だから小生の接客はどうしても演説口調になり、結果として熱弁しているように見えるのだと思う。
きっとそうだ。
まあ、お客さんがどこまでちゃんと聞いてくれているかは知りませんが。
そんな小生なので、自身の使用感を独自に分析した推理などをプロの人にぶつけてみることのできる展示会という場はとてもありがたく、重要な場である(注:たぶん通常はそんな場ではない)。
ちょっとした雑談も一言も聞き逃せないのだ。
というわけで、別段目玉の新商品があるというわけでもないスタイルフィット/シグノコーナーで笑みを浮かべながらたたずむ担当者に文字通り食いついているのは小生ただ一人であった。
今回替芯突撃隊が聞きたかったのはこの2点。
1)キャップ式のシグノはなぜ書き出しにどぼっとインクが出るのか
2)ノック式のシグノはなぜざりざりしてイケてないのか
猫町フミヲの辞書に「遠慮」の二文字はない。
オブラートとか知らんし。
まず1)の「キャップ式シグノ」から。
担当者曰く、キャップ式シグノの売りはインクの出のよさである。
黒々となめらかに書けることを重視したのである。
それゆえ、インクはやや出過ぎるくらいなのである。
書き始めにどぼっとなるのはその代償なのである。
その代わり、他社のゲルよりもかすれが少なく、インクの持ちも5年と長い。
なるほど。
ガッテンガッテン。
これはよーく分かりました。
特に最後の「他社のゲルよりもかすれが少なく、インクの持ちも5年と長い」ってとこ。
確かにキャップ式シグノの安定感は抜群。
小生はぺんてる派だけど、シグノの実力は本物。
そして替芯のクォリティにいたっては、ZEBRAやぺんてるとは比べ物にならない。
一般にゲルインクの寿命は2年、油性インクの寿命は3年と言われるが、前述のように三菱は5年とうたっていることからも自信がうかがえる。
実際ZEBRA、ぺんてるの替芯の寿命は短い。
これは猫町個人の経験と、文具店員としての経験からの結論。
特にぺんてるのゲルの替芯の寿命は短く感じる。
何度も買い置きしすぎて駄目にしたことがあるのだ。
したがってお客さんに聞かれたら正直にそのように説明します。
さて、「キャップ式シグノ」についてすっきりしたところで、2)の「ノック式シグノ」へ。
担当者曰く、キャップ式のゲルとノック式のゲルはインクも芯の中の構造も違う。
後者はインクの乾きを抑えるため、ボールを押すスプリングが芯の中に仕込まれている。
要するに、ボールに力が加わらないとインクが出ないようになっているのだ。
仮にノック式のゲルが、キャップ式のゲル同様にインクが出てしまったら、インクもれや乾きの原因になってしまうだろう。
しかしその工夫の結果、キャップ式よりもガリガリしたり、かすれたりしてしまう。
ガッテンガッテンガッテン。
すーーーっとした。
聞いてよかった。
何よりも嬉しかったのが、キャップ式がどぼっとして、ノック式がざりざりすることを「当たり前の前提」として受け入れてくれたこと。
そうなんですよ、そうなりますよねーと受け止めてくれたこと。
単にクレームとして処理しようとかそんなせこさはなく、そうなんですうちの子はそういう子なんです、でもいい子なんですよ…という愛。
こういうやりとりが、小生の感覚を知識へと変えていくのでした。
三菱の開発の人、ありがとう。
そう考えてみると…
しばしばキャップ式シグノのカラフルなインクの替芯がないことにがっかりされるお客さんに、これなら替芯がありますよとスタイルフィットを紹介することがあるけど、あれ、キャップ式とイコールではないんですよね。
お客さんは喜んでくれるけど、ちょっと罪悪感。
ときどきマニアなお客さんがいて、小生がスタイルフィットを紹介しようとすると、
お客さん「でも違うでしょ」
猫町(こくり)
お客さん(キラーン)
猫町(キラーン)
という謎の無言のやりとりがあったりもするが、ごくごくまれ。
うーん。
このあたりも本当は説明すべきか。
以上が三菱のゲルインクについて。
さて、これははたしてPILOTにもZEBRA、あるいはぺんてるにもあてはまることでしょうか。
厳密には各メーカーに聞いて回る必要があるものの、「ノック式のゲルのインクが出過ぎたら困る」という部分はどのメーカーも同じ前提のはず。
ということで、ノック式ゲルの替芯には何らかの工夫がこらされており、それゆえキャップ式ほどなめらかには書けないんじゃないか、と小生は考えている。
まあ、たいして使っていないものに関してやいやい言うのは信条に反するので、この問題についてはこのあたりにしておこう。
あと、当然ペン先の太さによっても違うと思う。
が、最後に一つだけ。
ぺんてるのエナージェルについて。
PILOTにもZEBRAにもぺんてるにも、ゲルにはキャップ式とノック式があり、それぞれに替芯が作られていることから、三菱のシグノの場合と同様のことがある程度予想される中、ぺんてるのエナージェルだけはやや異色である。
エナージェルだけが、キャップ式、ノック式同型の替芯なのだ。
これは興味深い。
というか、最初は理解できなかった。
替芯マニアの小生が、リフィルを売る時につい品番を二度見してしまうくらい、意表をつかれることであった。
キャップ式とノック式が同じ芯とは。
おそらくはエナージェルのインクの出来のよさということになるのだろう。
キャップ式に求められるインクの出のよさが、ノック式になっても負の要素にならないということだからだ。
でももしそうだとしたら、エナージェルってひそかに無敵な気がする。
「どぼっ」も「ざりざり」もなく、しかも乾きが比較的早いとくれば。
願わくは0.4のエナージェルをーーーーー
エナージェルユーロ(使い切り)には0.35あるのに、なんで定番のエナージェルは0.5までなんーーーーー
エナージェルについてはまた書く予定。
エナージェルの共通リフィルは知らなかったですが、やはりぺんてる、他社のやらない事をこっそりとやらかしてましたね。
エナージェルユーロは赤の0.7を使っていますが、なんだか不思議な書き味です。キャップ式なのに先端の感触がノック式に似てるような。こんな所にも秘密が仕込んであったりして。
エナージェル0.5、使っています。
確かに書き心地は好きだけど、インクの匂いが
ちょっと気になります。
年賀状もこの子で書こうかなぁ〜。
いつも楽しく拝見してますので、何も気にせず
猫町さんらしい視点で続けてくださいね。
こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
キャップ式シグノ愛用者でしたか!
ぺんてるびいきの小生もキャップ式シグノには一目置いており、ブラック、ブルーブラック、ブラウンブラック、グリーンブラック…と何本も持っております。
あの安定感は素晴らしいですよね(考えごとをしながら書くとぬたっとインクが出すぎてしまうことがあり焦りますが)。
エナージェルも一時期使っていたのですが、どうしても0.4じゃないと手が遠のいてしまうようで…
エナージェルの素晴らしさを再確認するためにも、また使ってみようと思っています。
こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
インクのにおい!
小生はそれをZEBRAのサラサに強く感じます。
サラサは書き上げた文字がとても美しく見える、素敵なゲルインクボールペンなのですが、書いている最中のにおいがなんともかんとも…
エナージェルは気にならなかったけれど…
今年の年賀状はまたエナージェルに頑張ってもらうつもりなので、じっくり観察してみますね。
あたたかい励ましの言葉、ありがとうございます。
そんなことを言われると調子に乗ってしまいそうです。
こんにちは。
そんないいにおいしましたっけ…
サラサはまたあらためて書きますが、プラスチックのにおいがします…
プラスチックのタッパーに鼻をつっこんだみたいなにおいが…
他メーカーのゲルにはないにおいです。
対して三菱はシグノやジェットストリームのように、性能を追求するメーカーなんだな、と自分は感じています。
こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
お返事すっかり遅くなってしまいました。
ノック式のゲルの替芯はだいたいそんな感じのようです。
PILOTのノック式の水性ボールペン、VボールRTもそんな感じだったはずです。
ペン先が紙に触れただけではインクが出ないようになっているというか、ペン先に力が加わらないとボールが紙に触れないようになっているというか。
小生の説明、分かりにくいですね。
上記の記事、少し補足しておきますね。
こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
お返事が遅くなってしまい、失礼いたしました。
確かに「ぺんてるびいき」かもしれません☆
ぺんてるはマニア心をくすぐるメーカーです。
そのまま男くさくマニア道を突っ走ってほしいのに、女子高生受けを狙おうとするなど(スリッチやスリッチーズなど。あれはモノとしてすごくいいのに、なんか男性を遠ざけている気がしてハラハラする)、コラコラ、そうじゃないでしょ!的なところもありますが、それらをひっくるめても好きなメーカーですね。
三菱やPILOTは大手ゆえの宿命…みたいなものが色濃い気がします。
ぺんてるだって大手なんですけど。
以上イメージトークでした。
店先に並んでいたエナージェルも、ノック式とキャップ式を比べてみましたが、まったく印象が違いますね。同じ芯のはずなのに。
同じ芯でも、軸によって劇的に印象が変わことを初めて知りました。そして、キャップ式軸とノック式軸の書き味の違いについて、猫町さんの見解をお聞きしたくなっております。
猫町さんのSARASA JF芯に対する書き味の評価、低いですけど、もしかして軸のせいもあるのではと思い始めています。epicの軸に入れる限り、私はハイパーGやエナージェルとほぼ同等という印象なのです。私が太字で試しているのに対して、猫町さんは細字で試されている違いがあるとは思うのですが。
こんにちは。
いつも血湧き肉踊るコメントありがとうございます。
はじめさんのようなお客さんが常連さんならとっくにクビですわ(話し込みすぎるため)。
はじめさんが書かれている件、分かります。
以下は小生の私見ですが、原因は2つ考えられます。
1つ目はやはりキャップ式、ノック式それぞれのボディの違い。
いくら芯の中に工夫が凝らされているとはいえ、やはりキャップ式の方がゲルインクにはいいのではないかということです(ボールの乾燥やそれにともなうボールの回転等に関して)。
要するに、キャップ式のボディに入れて使うほうがペン先が乾燥から守られ、筆記に安定感が出るのではということ。
2つ目は店頭で試し書きされているうちにペン先が傷んでいるケースです。
ゲルの多くは新品の商品のペン先にペン先保護(あるいはインキ止め)として樹脂玉が付いていることが多く、試筆用と分けてあることが多いのですが、たいていはお客さんによって樹脂玉はとられてしまい、その結果どのペン先もむき出し状態になってしまいます。
もちろん使用し始めるとノック式はペン先がむき出しなので、それだけがざりざりの原因ではないと思いますが、ペン先がむき出しになると、ペン先の傷む原因にもなるのです。
例えば試し書きを終えて什器に戻すとき、ペン先を出したままかつん!と戻すだけでもうペン先が傷つきます(あれはものすごい力がペン先にかかると聞いたことがあります)。
そういう手荒い扱いを受けてもタフな人たちもいますが、残念ながら瀕死の状態になってしまう人もいます。
試し書きの商品は手荒く扱ってもいいと考えている人が大半なので(悲しすぎます)、あれがそのペンの真の姿かと言われるとそうではない場合もあります。
が、やはり原因の1つ目、ノック式はなんだかんだで乾燥してしまうのではないかというのが正しいのかもしれません…
なので、持論からすると、SARASAのJFもキャップ式のボディに入れてあげれば多少はざりざりしない可能性があると思います。
が、最近思ったのですが、ノック式に関しては最初からSARASA>シグノですね。
以前、文房具ぶんぶん倶楽部のころは、今ほど詳しくなかったので、漠然とSARASAとシグノを比べていたのです。
つまり、ノック式であるSARASAとキャップ式のシグノを比べて、前者を酷評していたわけです(メンバー全員)。
が、ノック同士となるとSARASAが上ですね。
今までへし折りたいと思ったゲルの筆頭はノック式のシグノの0.38ですから。
あれはほとんど病気です。
なのであの替芯を売るときはHI-TEC-Cを売るときと同じくらい、(すげー…どーなってんだ…)と内心うめいております。
確かにペン先の太さもあると思いますが(太い方がインクの回りが良いためつるつる書けるのは確かです。それはジェットストリームの0.5になかなかエンジンがかからないのと同じことです)、細いのは細いなりに頑張らなければならないのがメーカー。
SARASAにも0.3が出たことだし、今後も見守っていきたいです。
印象の悪かったお店のハイパーGは、ペン先が痛んでいた可能性も否定できません。しかし、ご存知のようにノック式エナージェルは鞘のようなものが先端にかぶせてあってペン先を保護するようになっているので、ペン先が痛んでいる可能性は低いです。それにもかかわらず、書き味はキャップ式>>ノック式でした。なるほど乾燥説なら説明がつきます。
乾燥説が正しいとしますと、ゲルに近いJetstreamのインクにも同じ傾向があったりして。Jetstreamもキャップ式の軸に入れた方が書き味が良い、もしくは早くエンジンがかかる?
無駄に刺激してすみません。
乾燥説にせよ、損傷説にせよ、本当にこのあたりのことはあくまでも猫町の「私見」ですので、よろしくお願いいたします。
メーカーの開発担当者がもしこのブログを読んでいたら、あまりの知識のなさに、
(´_ゝ`)
な顔になっているのではないかと思うのです。
はじめさんはとても頭の良い方のように思えるので安心しておりますが、今日仕事をしながら、そのあたりのことがとても心配になっておりました。
で、懲りずに以下は私見ですが、ジェットストリーム0.5のエンジンに関しては乾燥説とはまた違うのではないかと考えております。
油性ボールペンに関してこの乾燥説があてはまるのは、書き出しがかすれる点に関してだけかも、と。
初筆からスムーズに書けず、いらない紙にぐりぐりぐりと書かないといけないあれです。
例えば、新油性と呼ばれるPILOTのアクロボールや、油性ソフトインクと呼ばれるOHTOのニードルポイントは書き出しがかすれることが多いのですが、これはインクがやわらかいので乾燥しやすくしてあるからと聞きました。
仮にキャップによって乾燥が軽減されれば、初筆ももう少しなめらかになる…のかも?
ジェットストリーム0.5に関しては、あれはやはりボールが小さく、インクが等しく回るまで時間がかかるからだと思います。
文字通りごしごしエンジンをかけてやらないといけないのであり、乾燥のレベルではない気がします。
それではゲルもエンジンをかけてやればずっとなめらかかと言うと、それもそうではないような気もしますよね…
油性とゲルの違い…なのかもしれません。
中途半端ですみません。
私はボールペンで手にメモをする癖があるのですが、その中で
ボールペンには手に書けるものと書けないものの2種類があるなと思っていました。
油性式はおおむね書けるのですが、問題はゲルインキです、
最初にサラサを使っていた私は、書き味はいいのに手に書けないのが
唯一の欠点だなと思い
会社の持ち主不明ペン立てを探していたらキャップ式シグノに出会いました、
書き味もいいし手にも書ける、これだと思い自分用にノック式シグノを買ってきたらこれが手に書けない!
同じメーカーの同じ名前のボールペンなのになぜ?と思っていたのですが
この記事に出会い、なるほど同じブランドでもキャップ式とノック式ではペン先の構造が違うのかと思った次第です。
もちろん私の手の性質もありますから、書ける書けないの直接の原因かどうかは分かりませんが、
大変参考になりました、ありがとうございます。
これからも楽しい記事を楽しみにしております。それでは。


