替芯の接客とアドレナリン。
2012年 04月 22日
ということで、「個人的にもり上がった替芯の接客パタンTOP3」の発表。
まず第3位は「一瞬のちら見せタイプ」。
「替芯欲しんやけど」と言いつつ、ちらっとしかペンを見せてくれないお客さん。
大好物でありました。
背広の内ポケットをちらっ
↓
「何色何本いたしましょう?」
↓
「黒2赤1青1」
↓
「おまたせいたしましたーSK-0.7の黒2本、赤1本、青1本ですー」
これは本当に数少ない小生の得意分野というか、単色でも多色でもたいてい正確にすばやく対応できます。
よほど改造しているとか、凝ってわざと違う芯を入れているとかいう以外はまず間違いなく。
それにわざと違う芯を入れているようなお客さんは、最初から芯の品番を言ってくる場合が多いですしね。
もちろんこんなことをやっていると、お客さんのほうが不安になって「ほんまに大丈夫?」とわざわざ中の芯を出して見せてくれたりもしますが、芯を取り出したほうが分かりにくい場合もあるんです。
芯に品番が書いてあることは書いてあるのですが、見えにくいのなんの。
特にZEBRAのJK-0.5。
あれは見えん。
なので軸で覚えてしまったほうがらくちんなんですね。
業界では「ヘッドだけで見分ける」などと言いますが、まあこんなことはしばらく文房具屋で働いていると誰でももれなくできるようになります。
単色の場合はクリップの形、多色や多機能の場合はレバーや軸のデザイン等で見分けられるようになります。
というか、雰囲気みたいなもので分かるようになります。
一瞬の空気みたいなので判断できるというか。
分解して芯を取り出すのは時間もかかるし、分解している最中に万一トラブルがあってはいけないので小生はめったに分解しない派でしたが、どうしても分解しないと分からないものも中にはあり、しょっちゅうやって来るくせに絶対に分解しないと分からない憎たらしいペンの筆頭がジェットストリーム4+1。
あれは軸だけ見ても0.7か0.5か分かりません。
お客さんに聞いても意識せずに使っておられる方が多く、結局分解するはめに。
個人的にむちゃくちゃ屈辱的な瞬間でした。
続いて第2位は「数で攻めてくるタイプ」。
「これって替芯あるんですかね」と言いながらごちゃあっと複数本のボールペンをカウンタの上に並べてくるお客さん。
これまた大好物でありました。
ちらっと見て頭の中のデータと照合しながら、端から順番に「これはこれ、これはこれ…」と芯を並べていくわけですが、別にそうしなくてもいいのにペンを見るのは1回だけと決めて、自分の記憶力の限界に挑戦してみたりしていました(小学生の男子並みの意地)。
一般に短期記憶の容量は「7±2チャンク」(チャンクとは情報のまとまりの単位)とされているし、まあ10本弱ならいけるのではないかと(いや、チャンクを上手に活用すればもっと本数は稼げるはず)。
もちろんこの作業の最中の「もっと太くしたいんやけど」「なめらかな書き味にできる?」等のリクエストも絶賛受付中でありました。
「これは他メーカーのにしたら1.6まで太くできますよ」「これとこれの芯は同じ形なのでこの書き味が大丈夫ならこれをこれに入れることもできます」…
こんなことをしていたからだめだったのかしらん…(遠い目)
もちろんファンシー系のペンとか100均のペンとか舶来もののペンとか対応できないものもたくさんあるのですが、あのぞろぞろぞろぞろっとペンをカウンタに並べられる瞬間はアドレナリン大放出。
レジが自分に当たったことの幸運に(よっしゃ!)のガッツポーズ。
もうお客さんが取り出す瞬間から頭の中に品番がざーっとあふれ出す感じで。
まあウキウキなのは小生だけで、たいていはみんなテンションががくーんと下がっていましたが…
一般的に替芯は嫌われ者です。
業界全体でも本気で嫌われています(またいつかあらためて書きます)。
あんなに夢いっぱいで楽しいのに。
そして堂々の第1位は「一瞬『?』、よく見ると『!』タイプ」。
これは名入れ軸に多いのですが、いつもとちょっと違うデザインになっているパタンです。
本当は透明軸なのに不透明軸になっているとか、それもとんでもなくカラフルになっているとか、キャラクターが印刷されてしまっているとか、とにかくいつもの姿からはかけ離れたデザインになってしまっているパタン。
こういった場合、お客さんは使い切りだと思っておられることが多く、「これ、使い捨てかもしれんのやけど…」と遠慮がちに持って来られます。
そう前置きされると店員も(替芯のないタイプか)と先入観を持って「そうですね、うちにはないですね」などと言ってしまいそうになるのですが、ちょっと待ったーーーーー
それって様変わりしてるけどクリフターちゃうん?クリップオンGちゃうん?と隣でこういうやりとりをされたら、ちらちら気になるわけです。
単なる名入れだとそこまで分かりにくくはならず通常と同じくスピード解決するのですが、例えば三菱の多色ボールペンクリフターは、ゴムグリップは20色の中から、先軸・後軸・クリップは80色の中から自由に選んでノベルティが作れるようになっており、そうなってくるとできあがった代物はいわゆるクリフターとはかけ離れた雰囲気を持つペンになってしまいます。
普段は空気感で瞬時に替芯を判断できるのが一瞬「?」とフリーズし、「あれ、でもこれ…」となる瞬間がむちゃくちゃ楽しいわけです。
いつもとは違ってめかしこんでいるペンたちを見るのが普通に楽しいというか。
「やー変装上手の@@君!」という感じがたまらんというか。
まあここまでウキウキさせてくれる軸もなかなかないんですけど。
同様に元のデザインがわからなくなるくらいぼろぼろになった軸や何代か前のデザインの軸というのも好きでした。
でもこれは雰囲気が残っているので簡単に分かってしまうことが多いのですが。
ちなみに上記のクリフターに関しては、最近は「ジェットストリームインサイド」ということで中にジェットストリームの芯が入っていたりするので簡単にS-7Sを出すのも間違いという、二重三重のトラップがさらにそそります。
いやー結構結構!
こんな感じで替芯の接客はどんなものもアドレリンが出まくる非常に楽しいものでありました。
他のスタッフが分解したりカタログを見たりする時間が短縮できる分、「長く使っておられるんですね」とか「これもう廃番になっちゃいましたよね」といった世間話をするのがまた楽しくて。
なお、ノベルティのボールペンや謎の白い替芯系はランク外。
ハアハア度でいくと間違いなくトップなんですが、あれは時と場合によってあまりにも接客のレベルに差が出てしまう難しいジャンルだったので。
ときどきこのブログで紹介してきたエピソードは時間があったときのケースや、預からせていただくことができたケースで、実際は時間や人手がないことで十分に追究できず、悔しいままに終わっていくことが多かったです。
もちろんある程度は経験と勘でこなしていけましたが、本当にファンシー系、ノベルティ系は奥が深い…
というわけで、ただ替芯を眺めてにやにやしているだけではなく、一応ちゃんと働いていましたよという話でした。
替え芯って、ちょっと本格的な店に行かないと売ってなかったのが、そういえば最近よく売ってるような気がします。僕はペン自体にそこまでほれ込むことが少なくて、大抵、もっといいやつが欲しい、と新しいのを求めてしまいます。周りにもあまり替え芯を買ってる話を聞いたことがないので、そんなに替え芯客が来るということに驚いてます。多色とか名入りとか特殊なやつならわかるんですが、バラバラといっぱい持ってくる人って、そんなにその軸が大事なのかな…と思います。いや、芯だけの方が安いからか?
なんにしても、芯を求めるって、なんだか軸に愛着があるようで、ちょっと楽しいですよね。
確かに中には「本当に芯を替えてまでこのボールペンが使いたいのか?」というような方もおられました…
そのボールペンの状態や、そのペンの見せ方などに愛が感じられないこともしばしばありましたので。
単に店員を困らせたいだけの方も悲しいことですがおられました。
まあこちらはどんなペンが来ても、ハアハア興奮しながら迅速な解決に努めましたが。