替芯ドーナツからHI-TEC-Cを考える。
2014年 06月 24日
ペン先の強度に適したインク量を替芯の厚み(替芯ドーナツの大きさ)で調整しているのではないか、というところまで考えたのが前回の記事。
そう考えるとどうしても頭をよぎるのはPILOTのHI-TEC-Cのことです。
あのペンほど最後まで使い切れないペンもないと思うので。
もちろんあのペンを使いこなされている方もたくさんおられるとは思いますが、自分自身の苦すぎる体験の数々、文具店員時代にお客さんから聞いた話、このブログのコメント欄でいただいたエピソードなどから判断するに、HI-TEC-Cに苦い思い出のある人は少なくない、ですよね。
要するにもろいところのあるペン先に対してインクが多すぎるんでしょう。
その証拠に「HI-TEC-Cはダメなのに、コレトならいける」という方が多いのもうなずけます。
コレトの芯径の細さ=インクの少なさなら、HI-TEC-Cのペン先のぼろが出る前に使い切れるのです。
まあ個人的には、多色軸のコレトは芯が斜めになる問題(ぺんてる・アイプラス。参照)などもあり、それはそれで単色のHI-TEC-Cとは単純に比べられないと思うのですが。
で、これらの問題をさりげなく解決しようとしたのがHI-TEC-Cマイカなんじゃないかと思います。
いや、解決しようとしてHI-TEC-Cマイカを作ったわけじゃないから、結果的に解決することになるかも、というのがより近いかもしれません。
上記にリンクしたHI-TEC-Cマイカのページを読むと、いろいろいいことが書いてありますが、要はペン先のチップは従来のHI-TEC-Cと同じままインクの量を減らし、クリップをなくしておしゃれな見た目にし、価格を安くしたのがHI-TEC-Cマイカなわけです。
で、替芯ドーナツの流れからきたので当然マイカのドーナツが気になります。
そこでタマミさんに調べてもらいました。
以下はタマミさんのメールからの引用です(一部猫町が加筆)。
********************
まず、マイカとHI-TEC-Cの芯径は同じ(軸の互換性あり)
マイカ0.3のドーナツは、HI-TEC-C0.3のドーナツより厚い。
マイカ0.4のドーナツは、HI-TEC-C0.4のドーナツと同じに見える。
が、マイカ0.4は、HI-TEC-C0.4より最初のインクの位置が1センチ短い。
すると、インクの量は、
HI-TEC-C(0.3と0.4は同じ)>マイカ0.4>マイカ0.3
よって、
経済的(筆記線の長さ)には、HI-TEC-C0.3が一番かもしれません(書けなくなる可能も(笑))。
********************
なるほどなるほど。
マイカは「インクの量を少なくして、見た目を変えて、安くして」というのは実際にメーカーさんから聞いていましたが、そのインクの量の減らし方にはやはりドーナツが一部関係していたのですね。
ちなみに昨日三宮に行く用事があったので、HI-TEC-Cとマイカを比べてきたのですが、マイカのおしゃれな外見のせいでインク量が非常に比べにくくなっておりました。
まず全体的にマイカが長くなっているので目の錯覚がするのと、ペン先の位置を合わせて並べても、マイカのカラフルで不透明な軸は中のインクがほとんど見えないのです。
もちろんインク量を比べさせないため、なんてチンケな理由でリニューアルされたわけではないことは分かっていますが、うまくできているなあと唸ってしまいました。
ここでさらにHI-TEC-Cマイカを実際に使ってみて、初めて最後までペンが使えたよ!となれば、替芯ドーナツ効果ばんざーい…なんですが、たぶん小生はやらないと思います。
羹に懲りてなますを吹く、ということわざがありますが、もうあのペン先には心折れるほど何度も懲りておりますゆえ…
ということで、HI-TEC-C0.3あたりで苦々しい体験をした方で、マイカならいけたぜ!という方がおられたらまた教えてくださいね。
PILOTもそこまで計算してドーナツを調整していたらおもしろいのですが。
過去の亡骸(途中で書けなくなったHI-TEC-C)を徹底的に分析すれば完璧なドーナツができると思うのですが、どうなんでしょうね。
このシリーズ記事、興味深いですね。
インクの量もさることながら、粘度もかなり関係あるのかも?
樹脂成型ではメルトインデックスという指標があって、金型や成型条件に関係します。
塗料業界経由の知り合いから、ゲルインク系、特に最初期からあるボールサインやHi-TECなんかは、芯の設計にこそ力点を置いたのだとか。(だから使い切りが多いんでしょうね)
今の替え芯式のゲルや新油性は、ペン先が違えば芯は別物と言っていいほど仕様が違うそうです。(耳学問)
ゲルインクや新油性はチキソトロピー性でインク流量を制御するため、インクの配合や芯径も設計が必要なんでしょうね。
そう思うと、ゲル芯や新油性の中にも宇宙があると思いませんw?
僕はハアハアしてしまいました。
原理的にはそうなんですが、ボールペンの水性、油性、ゲル等の分類、
境目がわかりません。
筆記具に疎い僕がわかるインクの違いは、せいぜいサインペンの油性、水性くらい。色や濃さ、また書きやすさはもちろん重要ですが、それが水性、油性、ゲルのボールペンの各特長と合致しないのです。(僕の場合)
素人の考察をお読みくださりありがとうございます。
粘度もかなり関係あるでしょうね。
あとはインク湧出量ですよね。
仮にボール径の同じA社の芯とB社の芯にまったく同じ量のインクが入っていたとしても、チップがどういう構造になっているかによってインクの減る速さも違うでしょうし。
ご報告楽しみにお待ちいたしております!
「小宇宙」という言葉で同世代だと確信しました(握手)。
インクとチップの組み合わせで芯が成り立つという話は以前某メーカーの展示会で小生も耳にしました。
素人には想像することしか出来ませんが、かなりハアハアな領域であることは間違いありません。
自分の場合は逆で、理屈はよく分かっていないくせに、ボールペンに関しては油性、水性、ゲルの違いは書き味でなんとなく分かります。
たぶん顔料、染料の違いも。
あらためて考えると原理なんて何一つ分かっていませんでした…