もう十年以上も文房具のブログを書いているわけですが、いつも使っているなじみの文房具についてさえまだまだ知らないことばかりだということにあきれながらも感動する毎日です。
何もそれは文房具の内部の複雑な構造や消しゴムやインクの成分といった話ではなく、自分の手と脳が感じるごく個人的な感覚の話なのですが、そんな小さな世界の話でも「分かったこと」などほとんどないんだなと思うわけです。
前回の記事もそうなのですが、なるほどそうかもしれない、と一つのことが分かりかけたような気がした後にもいろいろな発見があり、あかん、これはとても一回の人生では全部試すことも分かることも出来ない、という何十回目かの悟りに至るのでした。
もう何年も前に見た夢ですが忘れられない夢があります。
文具店員時代にいろいろなことを教えてくれた先輩に猫町が熱弁するのです。
「あのまま文具店員をしていたら鉛筆にもシャープペンにも消しゴムにも詳しくなれていませんでした。文具店員だけでは無理でした」
先輩はかつてのようにうんうん、とにこにこしながら相づちを打ってくれるのですが、自分で語っているだけのこの夢をよく思い出します。
確かにあのまま文具店員を続けていたら、少なくとも鉛筆や消しゴムについては今ほど語ることはなかったでしょう。
どうしてもがっちり使用する時間が必要になるからです。
転職の多い自分の人生はこの点に関してはよかったのかもしれません。
しかしそれでもまだまだなのです。
すっかり知り尽くしているはずの文房具に違う顔を発見しては、あかん、これはとても一回の人生では…と同じことを何度も何度も思うのです。
そしてこの「分かった気になる」「知らないことを発見する」の呼吸のような明滅こそが自分の文房具ライフであり、このブログなのだということに今さら気づくのでした。